ポーシュカポーシュカ

  • 2015.02.07 Saturday
  • 05:06
二丁目の角を曲がると暗い夜空に熟した果実が吊るされたような月が見えた。
さっき出た店で、またあの人がレジに立ち、おれが財布をポケットから出しにくそうな仕草したのがおかしかったのか、あの人はほのかに笑った。
なぜだろう。あの人の顔を見た後、歩いていると泣きそうになるようにこみ上げる気持ちがするのだった。

部屋に帰ると闇の中へ沈むようにうずくまり気を失う。
めーがねめーがね、眼鏡にしなーくちゃくちゃくちゃ…

そばに気弱そうにした木村多江さんのような女が立っている。
マネキンの顔部分を着せ替える白い仮面を手にしている。パーティー会場の袖裏にいるようだ。
不安そうな彼女に、手にした面の髪をほどき違う色の髪に変えるといいよ、と言う。
うなづく彼女はプレゼントのリボンみたいな赤い髪をほどく。
黄土色の太い毛糸がコロコロと、絨毯の上を転がってくるのを、おれは拾って彼女に渡す。
彼女は嬉々と面の頭にその毛糸を通していく。

たくさんかたくさんでないかわからないが人たちに囲まれる中、彼女が面を人たちに見せると注目されてるのを感じる。
面を上に掲げ披露すると拍手がわく。
おれは彼女からくるくると回す面を受け取ると、すぐさま軽く放り投げ、ぱんっと一回手を打ち、ふんわりと手のひらで卵を受け取るような仕草をしてから、くるっとその場をひと回りし、両手をポケットに突っ込みポーズすると、あら不思議、面は消える。歓声が辺りから起こる。

ポーシュカポーシュカ、おれは手品師だったのか。
ポーシュカポーシュカ、木村多江さんのような女の笑顔が見えるよ。

ポーシュカポーシュカ、らららららんらんらーーんらん、らーーらららららんらんらーーら、らーーらららららららんらーーん…





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